「産業革命以前の未来」へ


   「産業革命以前の未来」へ
 ビジネスモデルの大転換が始まる

          (目次)

はじめに                       
第1章 大航海のビジネスモデル            
第2章 産業革命のビジネスモデル           
第3章 通信と情報のビジネスモデル          
第4章 IT革命の勝者GAFA             
第5章 ユニコーン企業は社会構造に挑戦する      
第6章 AIとブロックチェーンが拓く未来社会       
第7章 中国では、すべての変化が同時に起こっている  
第8章 日本はどうすべきか              

索引

 

<概要>
 いま、世界のビジネスモデルは、大転換しようとしている。
 産業革命以前の独立自営業的な働き方への「先祖がえり」だ。組織の形態も大きく変わる。
 日本の産業や社会は、このような潮流に対して後れをとっている。

 同じ技術であっても、ビジネスモデルが違えば、成果も社会に与える影響も、大きく違う。
 現在、新しい情報技術が登場して、社会と企業に大きな影響を与えようとしている。新しい世界において、どのようなビジネスモデルが勝者になるのか、まだ分からない。
 技術進歩によってフロンティアを広げることが可能になるが、どのようなフロンティアを広げるか?そしてそのためにどのような方法を用いるべきか?
 どうすれば新しいビジネスモデルを見出すことができるか? 他の人には見えないフロントを見出し、他の人には考えつかない方法を考え出すには、どうしたらよいか?
 これが本書のテーマだ。

 本書では、「ビジネスモデル」という言葉を、普通使われるよりは広い意味で用いている。具体的には、つぎの諸点に関する選択だ。
◆分権的か集権的か
◆水平分業か垂直統合か
◆大組織か小組織か
◆有料で販売するか、無料で提供するか
◆政府の力を強くするか、市場メカニズムを活用するか
◆組織人か独立自営業か

 本書の基本的なメッセージは、産業革命によって垂直統合化・集権化・組織化が進展した、新しい経済の最先端は、水平分業・分権化のビジネスモデルへと先祖がえりしつつあるということである。
 ただし、大組織か小組織かということについては、先祖帰りは、まだ現実には生じていない。現代の社会において大組織がいまだに支配的であることは、否定できない。ただし、現在進行中の変化には、経済活動の中心が、産業革命前の小組織や個人に移る萌芽が見られる。人々の働き方においても、フリーランサーが増えつつある。
 本書では、これらの変化を、抽象的な概念として扱うのでなく、具体的な人々の活動として描こうとしている。

 各章の概要は、つぎのとおりだ。
 第1章では、大航海時代を見る。
 15世紀ごろに遠洋航海を可能とする航海技術が発達したが、ヨーロッパ的なビジネスモデルと中国のそれは、大きく異なった。勝ったのは、前者である。勝ったヨーロッパは、中世から脱却した。負けた中国は、その後500年間の停滞に陥ることになった。
 ただし、ヨーロッパでも、その後の発展は国によって差があった。
 最初に大航海に成功したのはポルトガルやスペインであったが、これらの国は、それを産業の発展に結びつけることができなかった。東インド会社による通商を通じて産業革命にいたる発展を実現できたのは、イギリスとオランダであった。
 第2章においては、18世紀から19世紀にかけての産業革命が、経済活動の姿を大きく変化させたことを述べる。
 工場制工業が可能になったことによって、経済活動は大規模な組織によって行われることになった。
 蒸気機関によって鉄道が可能になり、人間のフロンティアは再び大きく拡大した。これを支える産業として、鉄道と鉄鋼産業がまず拡大した。これらの産業は垂直統合化を進めた。
 それに続いて、石油と自動車産業が発展した。これも、垂直統合のビジネスモデルを採用した。
 この過程で、特にアメリカにおいて、空前の金持ちが誕生した。
 組織は大規模化し、そこで働く人々は、組織人となった。
 第3章においては、情報通信技術が登場したことを述べる。19世紀には電信と電話が登場し、20世紀には無線とコンピューターが登場した。これは、産業革命的な技術とは異なる性格の技術であるが、ビジネスモデルの面では、産業革命的な大規模な垂直統合が採用された。そして、AT&Tなど空前の大企業が登場した。
 この過程で、対応に失敗した大企業がある。最初の失敗者は、ウエスタンユニオンだ。電信会社として世界を制覇したが、電話の持つ潜在力を見抜けなかった。そこで勝ったのがAT&Tだが、そのAT&Tが20世紀には失敗した。
 1980年代からのIT革命によって、大型コンピューターがPCに変わり、電話がインターネットに変わった。企業のビジネスモデルとしては、垂直統合ではなく、水平統合水平分業が主要なものとなった。

 第4章ではIT革命の勝者としての「GAFA企業」について述べる。これらの企業は、工場のない製造業、検索広告モデルなどという新しいビジネスモデルを開発した。現代のアメリカの経済成長は、これらの企業の成長によって支えられている。
 第5章においては、新しく登場しつつある企業を紹介する。これは、「ユニコーン企業」と呼ばれる。シェアリングエコノミー、フィンテックなどにおいて、目覚ましい活躍をしている。ユニコーン企業の動向は、未来社会の行方を示唆するものとして重要だ。
 第6章では、新しい情報技術であるAI(人工知能)とブロックチェーンが、未来に向かって新しい可能性を切り開きつつあることを述べる。
 AIやブロックチェーンは、労働者の仕事だけでなく、管理者の仕事をも代替することによって、人間の働き方に大きな影響を与える。多くの人々の仕事を奪うという意味で、「破壊者」(distrapter)としての側面があることは否定できない。
 ただ、変化は、破壊だけではない。価値がこれまでより高まる仕事があるはずだ。AIやブロックチェーンによって価値が高まる仕事は何かを見出すことが重要だ。

 現在の中国では、第2章以降で述べたすべての変化が、同時に進行している。これが、第7章の内容だ。
 すなわち、産業革命的な大企業、GAFAに対応する企業群であるBAT、そしてユニコーン企業やAI・ブロックチェーン関係の企業である。中国は、長い歴史を通じて、国がすべてをコントロールする官僚国家であった。
 いま、それからの大転換が生じつつあるのかもしれない。しかし、政府の力は強く、それと市場主義経済と共存は、奇妙な混合だ。中国は、根源的な矛盾をはらみながら成長している。
 第7章においては、日本について述べる。日本は、産業革命的な技術にはうまく対応できたが、IT革命以降の新しい情報技術には適切に対応できず、世界の最先端からは大きく立ち後れている。この状況を変えるために何が必要かを考える。

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