経済最前線


経済最前線 2017年2月25日~



仮想通貨への消費税非課税措置で、銀行の送金サービスは不要になる    2017年3月22日
 2016年12月に閣議決定された税制改正大綱により、2017年7月1日以後は、仮想通貨の取引に係る消費税は非課税となる。
 現在、取引所でビットコインを購入する場合の手数料はゼロであることが多く、また、ビットコイン送金の手数料も非常に低いので、今年の7月以降は、送金相手がビットコインを受け入れるかぎり、ほぼゼロのコストで送金ができることになる。しかも、24時間いつでも送金が可能だ。

 これは、送金先が国内にいても、海外にいても同じことだ。
 現在のところ、ビットコインを受け入れる店舗は、日本では多くない。しかし、現在クレジットカードを使えない零細中小店舗が、これからビットコイン決済を受け入ようになる可能性は高い。受け入れ店舗数があるスレッシュホールドを超えれば、ビットコイン決済は急速に普及するだろう。

 銀行にとって大きな収益源である送金サービスは、潜在的にはもはや不要のサービスになってしまっているのだ。とりわけ、海外送金についてはそうだ。銀行からすれば、実に大きな問題である。
 銀行が独自の仮想通貨を導入せざるをえないのは、当然のことだ。


シムズの政策提言が日本で無効である理由
2017年3月21日
クリストファー・シムズは、2016年6月の講演の中で、インフレ目標が達成できない基本的な原因は、将来の財政政策に関する人々の予想にあるとして、つぎのように指摘した。
金利がゼロ近くまで低下した状態では、財政拡大が必要だ。そして、実際、財政拡大は行われた。
しかし、問題は、「将来それが逆転する」という予想を伴っていることだ。ヨーロッパの場合には、財政赤字の拡大はインフレを招くとの考えが一般的で、緊縮財政への支持が強い。日本では、インフレ目標が達成される前に消費税が増税された。アメリカでも、社会保障給付が将来カットされるという不安が強い。
このような予想があるために、いま財政拡大をしても、下記3月20日記事中の(1)式の右辺にある財政余剰は縮小せず、したがって、物価は上昇しない、というのである。

そこで、シムズは、こうした予想を変えることが必要だとする。
具体的には、財政引き締めは、インフレ目標が達成された場合にのみ行うこととする。
日本の場合には、「インフレ目標が達成できるまで、消費税増税を行わないことを政府が約束する」としている。

しかし、これは、日本の実情を無視した提言だ。日本の場合に財政赤字が縮小しないと予測されているのは、社会保障支出が増加するからである。そして、これは、高齢者が増えることによるもので、不可避の傾向だ。このこと自体は、変えようとしても変えることができない。

シムズの提案のように「消費税増税を行わない」としたら、何が起きるか?
社会保障制度を維持できなくなるから、保険料が引き上げられる。これは、広い意味での増税だ。それでも足りなければ、社会保障給付がカットされる。それは、家計消費を減らし、物価を下げる。
日本の財政(とくに社会保障制度)の現状は、消費税を思いのままの水準に決めるような余裕のある状態ではないのである。
こうして結局のところ、目標を達成することはできない。


FTPL(物価水準の財政理論)は消費税増税延期を正当化しない  
2017年3月20日

 FTPL(物価水準の財政理論)は、消費税増税延期を正当化するものだと考えられることが多い。しかし、そうは言えないことを以下に説明しよう。

基本式
   FTPL(Fiscal Theory of the Price Level、物価水準の財政理論)、は1990年代から議論されていたものであるが、2016年8月に、プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授がFTPLに関する講演を行って、にわかに注目を集めた。
 FTPLに関しては多くの専門論文があるが、シムズが2014年8月に行った Inflation, Inflation Fears, and Public Debt(http://sims.princeton.edu/yftp/Lindau/LindauSlides.pdf)という講演が一番分かりやすい。

 その基本は、「名目国債残高を、現在の物価で割った値が、将来にわたる実質財政余剰の現在価値の期待値に等しい」というものだ。つまり、

 名目国債残高/今期の物価=実質財政余剰の現在値      (1)

 ここで、財政余剰とは、「政府収入ー政府支出ー支払い利子」のことである。支払い利子が控除されているという意味で、財政収支の見通しにおいて通常使われている「基礎的財政収支」とは異なる。

 増税の延期などによって財政余剰の現在値が減少すると、(1)式によって、物価が上昇する。このため、FTPLは、デフレに対処するために減税や財政拡大が必要だとするものであり、財政健全化を否定するものだと考えられることが多い。
 しかし、以下で述べるように、事態はそれほど簡単ではない。

日本の場合、財政余剰がマイナス
 まず、注意すべきは、(1)が成り立つためには、財政余剰の現在値がプラスになっていなければならないことだ。もし、それがマイナスあれば、物価は無限大に発散してしまうこととなる。

 ところが、日本の場合、2020年までの基礎的財政収支の黒字化はできないとされている(http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h29chuuchouki1.pdf)。上で述べたように、(1)式の財政余剰はこれから利子支払いを控除したものだから、そもそも現在の日本では、FTPLを適用して議論する条件がないわけだ。

 また、仮に将来基礎的財政収支が黒字化するとしても、(1)式の右辺が小さい値である可能性が強い。したがって、(1)式を成立させる物価水準は極めて高いものである可能性が高い。現実に必要になるのは、むしろ、それを抑えることだ。

経済が成長すれば、金利があがり、物価があがる
 シムズ自身が上記の講演の中で注意しているように、(1)式の右辺で現在値を計算するための実質金利は、決して一定の値ではない。
 経済の成長率が高まれば、金利は上昇する。そうなれば、(1)式の右辺である実質財政余剰の現在価値は下落する。したがって、(1)の左辺も減少する。国債残高は固定だから、物価が上がることになる。
 物価上昇は、このようにして実現されることもあるのだ。

 この背後にあるのは、つぎのようなメカニズムである。すなわち、成長率が上昇するために家計所得が増加し、消費が増大する。その結果、需給がひっ迫し、物価が上がる。つまり、成長率の上昇が、金利と物価の双方を引き上げるわけである。
 現在のアメリカは、実体経済の堅調を背景に利上げを行なっているが、これは、このような状態だと解釈できる。これは、健全な状況だということができるだろう。

FTPLで消費税増税延期が正当化できるわけではない
 以上で述べたように、FTPLそのものは、財政拡大を奨励しているわけでもなく、財政健全化を否定しているわけでもない。
 したがって、仮にFTPLを受け入れ、またインフレ目標を受け入れるとしても、直ちに消費税増税延期などの政策的な結論を引き出すことはできない。
 現在の日本の政策に対する含意としては、むしろ、金融緩和政策が物価上昇に影響しないことの説明になっていることが重要だ。日銀の異次元緩和政策は(仮にインフレ目標を受け入れるにしても)、誤りなのである。

仮想通貨を利用して、フリーランサーとして働く 2017年3月19日
 今年からビットコインへの消費税が非課税になるので、買いやすくなる。また、メガバンクが仮想通貨を発行することで、多くの人が仮想通貨に接することになる。仮想通貨やブロックチェーン、AIなどの新しい技術を、身近な生活で利用できるようになったのは、大きな変化だ。

ビットコインなどの仮想通貨の利用により、これまではできなかったことが可能になる。
その第1は、取引手数料がほぼゼロになることを利用した取引だ。
われわれは、手数料の世界に生きている。株もFXも、利益が出ても、仲介業者に召し上げられてしまう。
ところが、仮想通貨の利用によってこの条件が大きく変わる。
ビットコインは手数料が低いというが、ゼロではない。また、即時に決済できるものでもない。しかし、こうしたことを補う関連サービスが登場してきた。
こうしたサービスを用いれば、ビットコインとドルの交換は、ゼロの手数料でほぼ瞬時にできる。このことを利用すれば、これまでは不可能であった裁定取引が可能となるだろう。
金融商品だけでなく、外国のウエブショップで購入したものを日本で売ることも可能になる。

仮想通貨によって可能となる第2は、マイクロペイメントだ。
現在では、アマゾン、楽天などに出品しか方法がないが、かなりの出店料を取られる。
しかし、仮想通貨を受け入れれば、自らのウエブで販売することが可能となる。
とりわけ、情報や知識を売る場合には、物流が存在しないので、零細ウエブショップが採算に乗る。専門情報サービス、アドバイスなどは、十分ビジネスになる可能性がある。

こうして、フリーランサーとして収入を得ることが可能になる。
これは、組織でサラリーマンとして働く人には、あまりピンと来ないかもしれない。
しかし、最近では、兼業を認める企業も増えている。組織に勤めながら、上で述べたような仕事を副業で行なうことが可能だろう。
「働き方改革」と言われるが、組織で働くことを前提にするかぎり、現状を大きく変えることは不可能だ。
フリーランシングこそが、究極の働き方改革である。


ブロックチェーン型のスマートロックは、未来社会のインフラになる。   
2017年3月2日

スマートロックとは、スマートフォンを用いてドアの開閉などを行うシステムのこと。

これをブロックチェーンで運営する仕組みを、ドイツのSlock.itが開発している。
部屋や車を、誰がいつからいつまで利用できるかを管理する。保証金はレンタル料金を差し引かれてユーザーに返還され、レンタル料金は自動的にオーナーに送られる。これらすべては、第三者の介入なしに自動的に実行される。

ブロックチェーンで運営されるスマートロックは、シェアリング・エコノミーを分散化し、UberややAirbnbのビジネスモデルを脅かす。
ロックできるものなら、家、車、洗濯機、自転車など、何でも誰もが簡単に貸したりシェアしたり売ったりすることを可能にする。個人や企業は、その資産を容易に収入にかえることができる。売買、賃貸、共有の差は、曖昧になる。
シェアリングエコノミーに革命をもたらし、未来社会のインフラになる。


「予測市場」は最も重要なフィンテックとなりうる
2017年2月28日

「予測市場」とは、「賭け」の市場のことである。世の中の森羅万象どんなことでもよいから、賭けの対象として提示する。例えば、今年の夏は冷夏になるか?次の選挙の当選者は誰か?等々の賭けを建てる。
それに対して賭けたい人は、一定の掛け金を支払って賭けに参加する。そして、当たれば配当を貰える。当たらなければ掛け金は没収される。

予測市場は昔からあった。インターネットが普及してからは、ウエブ上の予測市場もいくつか開設された。だが、多くの国で禁止されていた。その理由は、「射幸心をあおる」ということだが、もう一つの理由は、掛け率を設定し、判定し、配当を配る胴元が、不正を働く惧れがあることだ。
ところが、予測市場はブロックチェーンを用いて自動的に運営することができる。これは胴元がいないので、公平で透明なシステムだ。これによって、予測市場が発展することが期待されている。

ブロックチェーンを用いる予測市場の実験的な試みが、すでに、AugurやGnosisによって行なわれている(その具体的な仕組みは、拙著『ブロックチェーン革命』で説明した)。

ところで、予測市場は不確実な事態をヘッジするために用いることができる。例えば農民は、今年の夏が冷夏になれば作物が不作になってしまうが、その事態に備えるために、「今年の夏は冷夏」という掛けに掛けておけばよい。実際に冷夏になれば、農作物の面では被害を受けるが、予測市場からの配当でそれを補填できる。

実は、金融市場の大きな役割は、このようなヘッジ機能にある。昔から存在していたものとして、先物市場がある。ファイナンス理論の発展によって、先物を変形した様々なデリバティブが作られてきた。
しかし、金融市場に存在するヘッジの手段は限定されている。それに対して、予測市場では、どんなことでも掛けの対象とすることができ、したがって、どんなことでもヘッジすることができる。
例えば、ビットコインの価格の変動は激しいが、これに対するヘッジは、予測市場でできる。予測市場ではビットコインの価格に関する賭けがすでにいくつも建てられているので、それに賭ければよい。あるいは、自分で賭けを建ててもよい。

予測市場の優れた点として、専門家がその専門知識の価値を発揮できることがある。専門家は、その分野の予測に関して、一般の人より多くの知識や情報を持っており、予測において優越的な立場にあると考えることができる。
したがって、予測市場に参加することによって利益を得れれる可能性が高いわけだ。一方、専門家が参加していれば、予測市場における予測はより精度が高いものになるだろう。このようにして、専門家の知見を予測に活用することが容易になるわけである。つまり、予測市場は、ある種のクラウドソーシングとして機能するわけである。

したがって、予測市場は、これまでの金融のかなりのものを代替することができる。フィンテックが議論されるとき予測市場に言及されることは少ないのだが、予測市場は、実はもっとも重要なフィンテックとなりうるのである。日本でも、こうしたサービスが登場する必要がある。


AirbnbやUberはホテル業やタクシー業を破壊した。しかし、彼らはブロックチェーンによって破壊される
2017年2月26日

 AirbnbやUberは、空いている部屋や自家用車とその需要者をスマートフォンのアプリによって仲介するサービスを開発し、目覚ましい発展をした。これは「シアリングエコノミー」と呼ばれるものだ。

 どちらのサービスも、中央集権的な情報処理を行なっている。しかし、彼らが行なっていることは、スマートコントラクトの形に書き換えて、ブロックチェーンで運営することができる。そうなると自動的に運営できる。つまり、サービスの供給者と需要者が仲介者を介せずに、直接に結びつくことになる。ちょうど、ビットコインのシステムが、ブロックチェーを用いることによって、銀行などの仲介者なしに通貨の取引を行なっているのと同じことだ。

 そうなると、AirbnbやUberの仲介サービスは不要になってしまう。
 AirbnbやUberは従来のタクシー事業やホテル事業を破壊すると言う意味で「ディスラプター」と呼ばれているのだが、彼ら自身が、ブロックチェーンによって破壊されてしまうわけだ。

 ライドシアリングに関しては、既にLa’Zoozがブロックチェーンを用いたサービスの実験を行っている。Arcade Cityとよばれるプロジェクトも、ブロックチェーンを用いるライドシェアリングを提供しようとしている。
 Airbnbも、ブロックチェーン技術の重要性を認識しており、関連のスタートアップ企業を買収した。

 同様の試みは、分散電力システムにも応用されている。
太陽光発電をブロックチェーンを用いてコミュニティでの地域に用いる実験が、ニューヨーク市やオーストラリアのパースで行なわれている。

 

ビットコインの価格上昇の背後にあるもの       2017年2月25日

仮想通貨ビットコインの価格が、2月23日に、1btc=1172ドルと、史上最高値を更新した。
16年2月には400ドル程度だったので、3倍程度に値上がりしたことになる。
ビットコインの時価総額は約200億ドルとなり、アイスランドのGDPとほぼ同じ規模になった。

これまで、ビットコインの価格が上昇するのは、中国での需要増による場合が多かった。今回の価格上昇は、アメリカの事情によるものであることが注目される。

かねてから、ビットコインの価格を反映する上場投資信託(ETF)の認可を求める申請が提出されていた。米証券取引委員会(SEC)は、3月11日までに承認の是非を判断することになっているのだが、それが認められるのではないかとの思惑によるものだ。

ビットコインの価格の変動は激しいが、それだけでなく、変動のパタンが他の金融商品と異なる。「これが投資の立場からすると望ましくない」との解説もあるのだが、逆であって、価格変動のパタンが他の資産と逆相関関係にあることは、分散投資のポートフォリオを組む場合には、重要なことだ。


経済データのありかと使い方
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