仮想通貨革命で働き方が変わる


       『仮想通貨革命で働き方が変わる
ダイヤモンド社、2017年10月

             <目次>
序論 先端産業にそぐわない日米働き方政策              

第1章 いまなぜ「働き方」か?
1.長時間労働の底にある日本企業の基本問題   

 2.日本でテレワークやフレックスタイムがなかなか進まない理由   
 3.「高齢者は働かないほうがトク」という制度は見直すべきだ 
 4 なぜ「高齢者は働かないほうがトク」になってしまうのか?

第2章 新しい技術が可能とするフリーランサーという働き方      
 1.新しい情報技術が働き方を大きく変える
 2.クラウドソーシングとシェアリングエコノミー               
 3.アメリカでは、フリーランサーが全就業者の37% 
 4.日本でもフリーランサーへの関心が高まっている

第3章 仮想通貨はフリーランサーを支える              
 1.仮想通貨の利用が広がる
 2.仮想通貨が仕事をどう変えるかを探る  
 3.仮想通貨がフリーランサーの可能性を大きく広げる  
 4.仮想通貨で可能になる広告モデルからの脱却 

第4章 新しい技術はどこに向かうか?                 
 1.GAFAの時代
 2.ユニコーン企業の登場
 3.破壊者AirbnbやUberも遠からず破壊される
 4.スマートロックが未来社会の重要なインフラになる
 5.働き方改革の究極は人間的な仕事への特化  
 6.「技術立国」日本が情報技術で絶望的に弱い現実  

第5章 トランプ大統領の政策は、アメリカの労働者のためになるか?   
 1.トランプの票田「さびついた工業地帯」は、実は目覚ましく復活
 2.トランプ産業政策の問題点は、デトロイトを見ればわかる 
 3.シリコンバレーとはどんなところか
 4.新しいアメリカ経済を作ったシリコンバレー
 5.トランプとシリコンバレーの対立
 6.多様性を失えばアメリカは衰退する

第6章 政府の「働き方改革」は、労働者のためになるか?        
 1.「働き方改革」を「賃金カット」の体のいい口実にさせるな 
 2.「同一労働同一賃金」は正社員の給与引き下げ圧力になる  
 3.賃金が上がらないのは、非正規に依存せざるをえないから  
 4.限定正社員は「全員非正規化」につながりかねない     
 5.働き方改革は、規制一辺倒より市場に任せたほうがよい
 6.「働かされ改革」でなく「働き方改革」を求めよ 

おわりに 日本人の意識は変わったか?

 

              <概要>
<政策のなかで「人々の働き方」が重要なテーマに>
 日本でもアメリカでも、政府の政策のなかで「人々の働き方」が重要なテーマとなっている。
 日本では、安倍晋三政権が「働き方改革」を進めている。これは政府の構造改革政策の中で重要な地位を占めており、2017年3月には、「働き方改革実行計画」が取りまとめられた。ここでは、同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、賃金引上げと労働生産性向上、長時間労働の是正、柔軟な働き方がしやすい環境整備などが目標として掲げられた。
 日本経済が金融緩和政策や財政拡大に頼らずに本格的な成長をするためには、構造改革政策がどうしても必要だ。その中でも、働き方の改革は重要な課題だ。
 アメリカでは、ドナルド・トランプ大統領が、アメリカの労働者に職を取り戻すと言っている。大統領選挙中におけるこのアピールがトランプ候補に勝利をもたらしたわけだから、アメリカにおいても、人々の働き方の問題は重要な課題として意識されているわけだ。
 どちらにも共通しているのは、現在の働き方のトレンドに望ましくない傾向があると評価し、それを政府が正そうとしていることである。
 日本では、「実行計画」の目標にも示されているように、正規労働者と非正規労働者の差や、長すぎる労働時間などが問題視されている。トランプ大統領は、伝統的な製造業の就業者が減少しているのは望ましくないことであるとし、製造業の海外流出を食い止め、さらには流出した企業をアメリカに呼び戻そうとしている。

<各章の概要>
 本書は、以上のような観点から、「働き方改革」についての議論を行なう。
 第1章では、「働き方」が経済政策上の大きな問題として意識されるようになった背景について述べる。日本で長時間労働などが問題になるのは、高度成長期の日本組織の基本原理がいまに至るまで継続していることによる。
 この状況に対して、テレワークやフレックスタイムなどの新しい働き方が提唱されているが、実際にはあまり普及していない。その原因は、これらが日本組織における仕事の進め方に合わないことだ。
 また、高齢者の身体的・肉体的条件が改善しているにもかかわらず、高齢者の労働人口比率は低下気味だ。その原因は、社会保障制度などの社会的制度にある。
 第2章では、クラウドソーシングやシェアリングエコノミーなどの新しい技術の進展が、フリーランサーという新しい働き方を可能にしつつあることを述べる。アメリカではフリーランサーは全就業者の37%を占めるまでにいたっているが、日本ではシェアリングエコノミーに対する規制が強い。
 第3章では、フリーランサーの仕事として、ウエブを介する情報サービスの提供について述べる。ただし、現状では、送金の受け入れが難しいことが障害になる。仮想通貨は、この障害を乗り越える手段となる。
 第4章では、働き方に影響を与える技術が、どのような方向に進むかを探る。現在の技術開発のフロンティアは、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれるIT関連先端企業や、「ユニコーン企業」によって切り拓かれている。しかし、ブロックチェーン技術を利用して自動的に運営される事業体DAOが、近い将来に登場する。これによって、シェアリングエコノミーの姿も大きく変わるだろう。そうした世界では、「人間的な仕事への特化」が可能となる。
 第5章では、アメリカにおける働き方の問題を見る。トランプ大統領の票田といわれる「ラストベルト」(錆びた工業地帯)は、かつては確かに「錆びて」しまった。しかし、その中心地であるピッツバークやクリーブランドは、いま目覚ましく再生している。それは、医療産業などの新しいハイテク産業が成長しているからだ。トランプの政策は復古主義にすぎず、それが実現されればアメリカ経済は弱体化するだろう。具体的には、特殊技能職に認められる就業ビザである「H-1B」の扱いが問題となる。
 第6章では、政府が進める「働き方改革」について述べる。長時間労働を抑制しようとする政府の政策によって、所定外労働時間は全体としては減っている。しかし、所定外給与も落ち込んでいる。また、深刻なレベルの長時間労働は減っていない。日本のサービス産業は生産性が低いため、非正規労働に頼らざるをえない状況にある。これを無視して「同一労働同一賃金」を進めれば、全体の賃金を引き下げる結果になりかねない。
 「時間給から成果給」への移行で本来必要なのは、成果を正しく測定し、それを給与に正しく反映させる仕組みの確立だ。「高度プロフェッショナル制度」にはそれがないので、単なる「残業代ゼロ」の制度になってしまっている。「働き方改革」を実効性のあるものにするには、規制に頼るだけでなく、価格の活用など、市場に任せる方法を重視すべきだ。