経済最前線


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2017年2月3日~2017年2月22日

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共和党税制改革案が目指す法人税の支出税化とは何か? 2017年2月22日
アメリカ共和党の税制改革案(ブループリント:A Better Way  for Tax Reform )は、法人税についての大改革を目指している。
第1は、法人税の支出税化、第2は、領土主義だ。

まず、支出税化について。
現在の法人税は、法人の「利益」を課税ベースとしている。これは個人に対する課税が「所得」をベースにしていることと対応している。しかし、これは法人に対する課税のあり方として、唯一のものではない。
法人税の課税ベースを根本的に見直すべしとの議論は、税の専門家の間では、昔から行なわれていた。
比較的最近のものとしては、1977年のアメリカの「財務省報告」(ブループリント)や78年のイギリスの「ミード報告」がある。これらは、「基本的な課 税ベースを所得から支出に転換させる」という考えを提起した。これは、「支出税」と言われる考えであり、税理論の観点から大変重要なものである。法人税に ついては、企業の売上げから支出を控除したものを課税ベースとする「キャッシュフロー法人税」が提案された。これは、法人の「支出」を課税ベースとするも のだ(具体的な課税ベースについては、さまざまな考えがある)。2010年11月には、ミード報告の後継報告書として、「Mirrlees レビュー」が公表された。
個人に対する課税として、従来の「所得」を中心に課税する仕組みから「消費」を中心に税制に移行してゆくのであれば、法人に対する課税も、従来の「利益」に対する課税から「支出」に課税する仕組みに移行するのが整合的である。

現 実の税制改革案としても、アメリカ財務省によって2007年12月20日に取りまとめられている(Approaches to Improve the Competitiveness of the U.S. Business Tax System for the 21st Century)。これは、当時、1986年のレーガン税制改革以来の抜本的な法人税制改革を提案したものと考えられた。
財務省の報告は、法人税改革の方向として、つぎの3つの選択肢をあげた(ただし、そのいずれを取るべきかについては、結論を出さなかった。なお、この報告 が対象としているBusiness Tax は、正確には法人所得税-Corporate income tax-と一致しないところもある。しかし、以下では便宜上「法人税」という名称を用いる)。
(1)現在の法人税を廃止し、「ビジネス活動税」(Business Activities Tax :BAT)を導入する。
(2)現在の法人税における特別措置を廃止して課税ベースを広げ、同時に税率を引下げる。
(3)現行法人税のいくつかの個別的問題に対処する。
「ビジネス活動税」(BAT)の課税ベースは、企業の売上げから財とサービスの購入額を控除したものである。投資支出も控除対象となる。その半面で、賃金は差し引かれない。利子などの金融収支は、受取りも支払いも含まれない。
したがって、BATの課税ベースは、企業段階での付加価値になる。経済全体では、その総額は消費に等しくなる(企業間の取引は相殺されるからである)。つ まり、ヨーロッパの付加価値税や日本の消費税のそれと基本的に同じである。ただし、付加価値税と違ってインボイスを用いない。この点では、日本の消費税と 同じだ。
現在の法人税の課税ベースである「利益」と比べると、賃金だけ拡大し、「投資支出ー減価償却」と「受取り利子ー支払い利子」だけ少なくなる。したがって、現在の課税ベースより大幅に増える。このため、税収中立的な税制改正を行なえば、税率は大幅に低下する。

BATは、キャッシュフロー法人税と比較すると、賃金の控除を認めない点が違う。しかも、個人所得税には手をつけない。ただし、課税ベースを大幅に広げるため、税の構造は現在とは大きく異なるものとなる。ある意味では、レーガン税制改革より野心的なものだ。
提案(2)の特別措置の撤廃でも、課税ベースはかなり広がる。現在の加速償却をも廃止すれば、税率を現行の35%から28%に下げることが可能とした。
このように表面上の税率は低下するが、それは課税ベースが大幅に拡大する結果であることに注意が必要だ。日本では、この報告を引用して、「アメリカでは法 人税率を28%に引下げることを検討している。だから、日本でも税率を引下げよう」という議論に利用されかねない。日本で行なわれた法人税論議は、課税 ベースを現状のままとして税率を引下げることを狙っていた。そこで目的とされたのは、単なる企業の負担軽減である。

日本でも、法人企業の利益ではなく、資本金や付加価値額などを基準として課税する「外形標準課税」が、地方税である事業税にはすでに一部導入されている。キャッシュフロー法人税は、これと近い(外形標準課税を理論的にサポートするのが、キャッシュフロー法人税である)。
国の法人税についても、キャッシュフロー法人税、ないしは外形標準化が検討されるべきである。これによって、法人課税の課税ベースは拡大する。赤字法人にも課税されることとなるので、課税対象となる法人数は、現在の3倍以上に拡大する。
これは、負担率とは別のイッシューであることに注意が必要だ。法人に対する課税を、赤字企業も含めたより多数の法人が負うため、仮に法人負担総額を不変の ままとすれば、現在法人税を負担している企業にとっては、負担が著しく軽減される。また、利益操作が行われることもなくなるので、公平にも資する。

法人税改革についていま一つ考慮すべきは、法人税率の引下げが外国からの投資を増加させられるかどうかだ。資本が増えれば労働生産性が上昇して労働者の賃金は高まるから、外国からの投資は増えるほうが望ましい。
ところで、法人税率を下げたときに外国からの投資が増加するか否かは、資本輸出国の税制に依存する。日本やアメリカのように「全世界所得課税プラス外国税額控除」方式をとっていれば、結局は本国の税率になってしまうので、資本輸出には影響が及ばない。
しかし、ヨーロッパ大陸の多くの国は、「国外所得免除方式」を取っている。こうした国からの投資は、受入国が税率を下げれば増加する。実際、アイルランドやイギリスは法人税率を引下げて海外からの投資を増加させ、それによって経済活性化を実現した。
ヨーロッパでは、多くの国で法人税率の引下げがなされた。それは、外資導入の促進という観点から行なわれたと考えられる。
今回の共和党案は、この点に関しても、海外子会社からの配当を課税所得に含めないこととし、国際課税を、領土主義に転換しようとしている。

アメリカ共和党の税制改革案は、法人税をキャッシュフロー税とし、国際課税を大転換する2017年2月20日

アメリカ共和党の税制改革案(ブループリント:A Better Way  for Tax Reform )は、付加価値税と同様の国境税調整を行なうとともに、海外子会社からの配当を課税所得に含めない。これにより、国際課税を、「仕向け地原則、領土主義」 (destination-based, territorial approach for international taxation)に変更しようとする。
ところで、WTOは、法人税のような直接税については、仕向け地原則を認めず、原産地原則をとっている。したがって、共和党案は、WTOの規則に反する可能性が高い。

しかし、ブループリントは、法人税を消費課税にすることによって、この問題を解決しようとしている。
直接税の課税ベースを所得でなく支出にすべきだという議論は、昔からあった(古くは、ニコラス・カルドアの議論)。所得=消費+貯蓄の関係があるから、貯 蓄を非課税すれば、直接税においても消費を課税ベースにすることが可能である。これは「支出税」と呼ばれてきた考えだ。
法人税について言えば、キャッシュフローの差額に課税することによって、それが実現できる。
共和党のブループリントは、法人税を支出化することを考えている。

問題が直接税か間接税かの区別ではなく、消費課税か所得課税かの区別であれば、「付加価値税で仕向け地原則が認めれられるので、支出税タイプの法人税でも認められる」という論理になる。これは、国際課税に関する大きな原則の転換だ。
日本も税制上の大きな対応を余儀なくされるだろう。

 

トランプ税制改革は日本に深刻な悪影響。なぜ日本の株価が上がるのか、理解できない
2017年2月16日

ドナルド・トランプ米大統領は、「大規模な税制改革計画を、そう遠くないうちに提出する」と述べた。

トランプ政権の 税制改革は、単に法人税を減税するというだけのものではない。アメリカからの輸出を有利に扱い、輸入を不利に扱うことによって、貿易に影響を与えようとしている。この意味で、レーガン税制改革とはまったく性格が異なる。

トランプ大統領の提案は、法人税率を現行の35%から15%に引き下げる一方で、海外で生産するアメリカの企業からの輸入に対して35%の関税を課すとする。
共和党の税制改革案は、やや複雑だが、つぎのようになっている(これは「国境税調整」と呼ばれる)。
法人税率は20%に引き下げる。また、国内売り上げから国内費用を差し引いたものを課税対象とする。現行税制と比べれば、第1に、輸出にかかわる売上は課税対象から外され、他方で、輸入原材料費については、新たに20%の課税がなされることになる。
つまり、輸入品だけに20%の消費税が突然課されるのと同じことになるわけだ。
輸入についていえば、ドルが突然2割減価するのと同じことになる。

現在のところ、トランプ大統領の提案と共和党案と、どちらが現実化するか分からないが、どちらになるとしても、貿易に重大な影響を与える。共和党の税制改革案の場合には、つぎのようになる。
例えば、日本車とアメリカ車を比べると、アメリカ国内で日本車の価格が上がり、アメリカ車の価格が下がる。部品も含めてアメリカで生産しないと、アメリカ国内では、アメリカ車と価格面で競争できなくなる。
これは、「貿易の利益」を全く否定しようとする考えだ。
日本の株価が、なぜトランプ大統領の経済政策を歓迎して上がるのか、まったく理解できないことだ。

また、アメリカの消費者に対しても、大きな影響を与える。
輸入品が高くなっても、中国など外国で低コストで生産しているものを、いまさらアメリカで生産することはできない。したがって、アメリカ国内物価が上がるだろう。
仮に企業が法人税増加分のすべてを製品価格に転嫁するとすれば、輸入原材料価値の2割だけ消費者物価が上昇することになる。
仮に輸入原材料価値が消費の1割であるとすれば、消費者物価は2%上昇することになる。
こうしたことがあるので、小売り業界などから強い反対がある。

さらに、トランプ大統領の提案と共和党案も、WTO(世界貿易機関)の規則に反する可能性が高い。
これに対抗するには、二国間交渉ではなく、国際世論を味方につける必要がある。WTOの重要性が高まってきた。

経常収支の不均衡が問題とされる可能性     2017年2月14日
日本の経常収支は、2016年に約20兆円という巨額の黒字になった。これは2006,7年頃以来の規模の黒字だ。他方で、アメリカの経常収支の赤字は徐々に拡大しており、最近では年率で5,000億ドル近くにまで膨張している。

2006,7 年頃には、こうした経常収支のインバランスが問題だとの議論がアメリカでなされた。しかも、その原因がアメリカ側にあるのではなく、アジア諸国(日本と中 国)の過剰貯蓄にあるという議論であった。こうした認識によると、「アジア諸国は支出を増大せよ」という結論になる。

トランプ大統領がこれまで問題としてきたのは、貿易収支の不均衡だ。しかし、貿易収支にとどまらず、経常収支の不均衡が再び問題とされる可能性がある。
日本に対しては、「財政支出を増大せよ」という要求になる。これに対して、日本はどのように対応すべきだろうか。

円安で実質消費の動向が変化 2017年2月13日
本日発表されたGDP速報によると、2016年の実質成長率は1.0%となり、15年の1.2%よりは低下した。

実質民間最終消費支出の前年伸び率は、14年、15年と連続してマイナスだったが、16年にはプラスになった。
しかし、四半期別に見ると、1~3月期、4~6月期、7~9月期と対前期比がプラスだったが、10~12月期にはマイナス0%に落ち込んだ。

7~9月期までの実質消費伸びがプラスだったのは、消費者物価が下落し、実質賃金が上昇したからだ。
しかし、昨年11月からの円安と原油価格の持ち直しによって、輸入物価指数は上昇に転じており、それを反映して、消費者物価指数の対前年伸び率のマイナス幅が縮小しつつある。このため、名目消費の伸び率は上昇したにもかかわらず、実質消費の伸びが低下した。

つまり、日銀のインフレ目標が達成できなかったために経済成長が実現したが、その状況が変わってきたために、実質消費の伸びが鈍化してきたのだ。この状況が続けば、実質賃金の下落と実質消費の減少という現象が再び常態化するだろう。
いま日本に求められているのは、金融緩和を停止し、為替レートを円高に導き、実質賃金を引き上げて消費主導の経済成長を実現することだ。

なお、10~12月期には、輸出がかなり伸びている(季節調整済み実質輸出の年率換算対前期比は、11.0%)。円安の進行との関係で、トランプ米大統領からの批判が向けられる危険がある。


「すべての生産を国内で」は、貿易の利益の否定
 2017年2月12日

日本政府は、日米首脳会談に臨むにあたり、「自由貿易の重要性をトランプ大統領に説得する」としていた。しかし、一体、どのような説得をするつもりだったのだろうか?
貿易の利益とは、(一定の条件が満たされるなら)、「自動車を日本で生産してアメリカに輸出し、アメリカは農産物を生産して日本に輸出する。それによって日本もアメリカも豊かになる」ということである。

「日本の自動車メーカーが日本で生産せず、アメリカに工場を建設してアメリカで生産すれば、そしてそうすることによってのみ、アメリカの労働者の利益になる」ということではない。
これは資本自由化の結果生じることであって、そのこと自体は(一定の条件が満たされるなら)良いことであり、進めるべきことである。しかし、それは「自動車を日本で生産してアメリカに輸出すること」を否定するわけではない。

「中国が鉄鋼を過剰生産して困る」という論理は、「すべての生産を自国内で行うことが労働者のためになる」という考えであり、貿易の利益を否定する考えなのである


安倍首相の経済認識はトランプ大統領と同じ
  2月12日

安倍晋三首相は、2月10日、全米商工会議所の演説で、中国の鉄鋼過剰生産を批判した。つまり、日本やアメリカの鉄鋼産業を守るために、中国は鉄鋼生産を抑制すべきだということだ。

この論理を自動車産業に当てはめれば、「アメリカの自動車産業を守るために、日本は自動車輸出を自制すべきだ」ということになる。
これは、トランプ大統領の認識と同じものだ。「先進国も在来型製造業を保持しよう」というもので、世界を90年以前の世界に戻そうというものだ。
ここには、「先進国は新興国とは異なる高度な産業構造に転換することによってこそ発展する」という発想はない。

安倍・トランプ的な見方は、現実の認識としても間違っている。
アメリカの場合、ラストベルト(「錆びた工業地帯」)にあるクリーブランドやピッツバ―クは、製鉄の町から脱却して、医療産業に転換し、それによって目覚ましい成長をしている(ダイヤモンドオンランイン)http://diamond.jp/articles/-/115463
それに対してデトロイトの回復ははかばかしくないが、それは、自動車産業に固執しているためだ(ダイヤモンドオンライン)。


日米共同声明で、通商・経済問題は抽象的。円安批判、自動車輸出批判の余地は残されている   
2017年 2月11 日

 10日午後(日本時間11日未明)に発表された日米共同声明において、防衛問題では、尖閣列島への日米安保条約適用など、具体的な問題に言及している。それに比べて、通商・経済問題では、抽象的で一般的な表現にとどまっている。

日本政府は、日米首脳会談に臨むにあたり、(1)日本の自動車産業がアメリカの雇用創出に貢献していること、(2)日本の金融緩和政策は物価上昇率を目的 としたものであり、円安を目的としたものではないこと、の2点をアメリカ側に説明したと報道されている。また、アメリカ国内の雇用創出計画も提案したとさ れる。
しかし、これらについて、トランプ大統領がどのような反応を示したのかは、分からない。

問題となっていた 日本の自動車輸出や金融緩和政策に関して、今後も日本批判がなされる余地は残っている。
そもそも、財務長官も商務長官も就任していないのだから、今後の政策について具体的な方向を示せないのは当然とも言える。
為替レート問題については、何も記されていないが、今後の日本の金融政策に対して、かなり強い制約が加わっていることは否定できない。

11月に安倍晋三首相と会見したトランプ氏は、これから日米首脳間で素晴らしい関係を築けると語った。それにもかかわらず、その後、日本からの自動車輸出を強く批判した。円安政策を行なっているとも述べた。
だから、今回ゴルフで親密さを確認したとしても、トランプ大統領の対日批判がなくなる保証は全くない。

日米共同声明で唯一具体的に書かれているのは、アメリカがTPPから離脱したということだ。これまで日本政府は、TPPの重要性をアメリカに説得すると言ってきたから、それを拒絶されたことになる。
今後の通商交渉は日米二国間で行うことを認めたわけだ。考えられるのは、農畜産物に対するアメリカの関税引き下げ要求だ。それに対して、日本がアメリカのトラック輸入関税の引き下げを要求できるのだろうか?

ところで、以上の問題を、通商・為替戦争と捉える見方が一般的だ。とくに、政治面の記事やコメントではそうである。
しかし、経済的に見た場合、農畜産問題にしても為替レート問題にしても、それが日本の国益だとして頑張る必要はない。むしろ全く逆であって、農畜産物の関 税引き下げも、円高も、日本の消費者の立場から見れば、望ましいことだ。この機会を利用して、日本の経済政策が大きく転換すべきだ。

米首脳会談 親密さと批判は別    2017年 2月10 日
 2月10日に行なわれる日米首脳会談で、安倍晋三首相は、アメリカの雇用創出計画を示す。また、会談後は、トランプ大統領とゴルフをする。このように報道されている。

しかしその半面で、安倍首相は、ト入国禁止強化の大統領令に対して、意見は表明していない。
批判を避けて親密な関係を作り出したいというのだろうが、親密さと批判は別のものである。

世界の多くの首脳が、トランプ大統領の政策に対して反対を表明している。
メルケル独首相は当初からトランプ政策を非難している。メイ英首相は、会談後帰国してから大統領令に反対声明を発表した。
企業もそうだ。インテルはアリゾナ州に半導体の工場建設すると発表したが、他方で、大統領令に対する連邦控訴裁への意見書には名を連ねている。

批判を避けてトランプ大統領の心証をよくすれば、一時的にはトランプ大統領の対日批判は弱まるかもしれない。しかし、それで話が済むはずはない。
足元を見透かされれば、対日要求がエスカレートする可能性は否定できない。ビジネスの交渉であっても、原理原則を無視してはならない。ましてや、政治的な交渉であれば、まず自らの価値観と信念を明確に表明する必要がある。

今回の会談で、日本という国家の価値観と信念が、世界に示されることになる。


2016年は、円高で実質賃金が伸び、経済成長率が高まった  
2017年 2月 7日
GDP統計によると、実質民間最終消費支出も実質家計最終消費支出も、16年の各四半期において、プラスの伸びである。

もし、2月13日(月)に公表される2016年の10-12月期(1次速報)において、10-12月期もプラスになれば、リーマンショック後で、各期の伸びがすべてプラスになった初めての年になる。
暦年ベースで見て、実質民間最終消費支出の対前年伸びは、14年も15年もマイナスだった。しかし、16年はプラスになる可能性が強い。
(ただし、家計調査によると、2人以上の世帯実質消費支出は、2月を除く各月で、16年を通じて対前年比がマイナスになっている。これは、上で見たGDP統計の傾向と一致しない)。

この結果、16年の実質国内総生産GDP伸びは、プラスとなり、しかも、15年の値(1.2%)を上回るだろう。
すでに日本銀行も、1月31日の金融政策決定会合で、16年度の実質成長率見通しを、従来の1.0%から1.4%に引き上げている。

16年は、年初から円高が進み、株価が下落した。11月のいわゆる「トランプ相場」までは、円高が続き、株価も軟調だった。
こうしたことから、あまり順調な年でなかったような印象を持つ人が多い。
しかし、消費やGDPで見れば、上のように、順調な成長が実現した年だったのだ。

それは、円高と原油価格低下によって消費者物価が下落したからだ。このため、上で見たように実質賃金が上昇し、実質成長率が高まったのだ。
実際、厚生労働省が6日発表した毎月勤労統計調査によると、2016年の実質賃金は前年比0.7%増となり、5年ぶりのプラスとなった。

円高は、企業経営者や株式投資家から見れば望ましくないかもしれないが、国民から見れば望ましいことなのである。16年のデータは、そのことを証明している。
16年には、輸出も好調だった。円高が進んだにもかかわらず、輸出が減少しなかったことが注目される。

なお、16年10-12月期のGDP速報値が発表される際に、基礎統計の改定などから、成長率が過去に遡って改定されることになっている。


アメリカの三権分立が実際に機能してるのを見て驚嘆
   2017年 2月 7日

アメリカの国家権力構造は、独裁者が登場できないように作られている。
それにもかかわらず、トランプ大統領は、就任直後から次々と大統領を発し、TPPからの離脱などの重要な決定を、独裁的に行なった。特定国からの入国禁止措置が一方的に強行されるに及んで、アメリカは暴走し始めたように見えた。
反対デモは各地に起こったが、国の制度としてこれを食い止めることは、誰にもできないように思われた。

ところが、司法からのチェックがかかった。
上記措置に対して、ワシントン州の連邦地方裁判所が一時差し止めを命じた。この判断がアメリカ全体に対して有効であるというのは驚きだ。
それを不服とした政府が連邦控訴裁判所に上訴したが、却下された。
アメリカの三権分立が実際に機能してるのを見て驚嘆する。

アメリカの制度において議会が強い権力を持っていることは、知っていた。しかし、大統領が大統領という強力な手段を持っていることを知って、驚きだ。それにも増して驚きなのは、司法がそれにチェックできることだ

国家機関の間でこのようなバトルが起こることなど、日本では想像もできない。アメリカの制度がこれからどのように機能していくのか、独裁者の登場は阻止できるのか、そしてアメリカはどの方向を目指すのか、極めて注目される。

日本は、トランプのご機嫌取りをしようとしているが、言うべきことは言っていない。日本はトランプの手下になろうとしているのだろうか?   2017年 2月 6日

 安倍首相は、トランプの当選後、いち早く同氏の下に駆けつけた。

2月20日に予定されている日米首脳会談においては、ゴルフをするという報道がなされている。また、アメリカの雇用を増やすために日本が資金協力する計画を持っていくとも報道されている。
このように、アメリカのご機嫌を取ろうとする政策は、十分すぎるほど行なっている。

後の2つは、報道されているだけで事実ではないかもしれない。しかし、その半面で、言うべきことは言っていない。これは事実である。

トヨタ自動車は、名指しで工場立地を批判された唯一の外国企業ではないかと思うが、そのような理不尽な批判に対して、日本政府は抗議を行なっていない。
また、特定国からのアメリカ入国制限強化に対して、世界の様々な国の首脳が批判を表明した。それにもかかわらず、日本は沈黙したままだ。

日 本政府のこうした対応を見ていると、ガキ大将の手下になろうと汲々とする生徒を思い出してしまう。クラスに新入生が入ってきて、理不尽な我儘をする。しか し、力が強いので、反抗すると大変な目にあいそうだ。そこで、おもちゃを差し出して、なんとか手下にしてくれと哀願する。
こうした態度を取ることの問題は、他の級友たちからボイコットを食らってしまうことだ。

 

「物価水準の財政理論」(FTPL)を日本で実行すれば、事態はコントロールできなくなる2017年 2月 5日
プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授が、新しい政策を提案している。「物価水準の財政理論」(FTPL)と言われるものだ。
政府が2%のインフレ率を目標にかかげ、増税を延期する。インフレによって実質国債残高の少なくとも一部を解消する。

この政策で最も問題なのは、物価が上昇すれば名目金利が上昇し、国債の利払いが急増してしまうことだ。国の一般会計では、すでに歳出の約1割が利払いに充てられているので、金利が上昇すれば赤字が急拡大して、国債残高はさらに増加する。
実際に物価が上がらなくても、将来の国債価格の低下を予想すれば、金利は今すぐに暴騰する可能性が強い。経済は大混乱に陥るだろう。
さらに、日本の財政には、インフレによって自動的に増加する項目がいくつもある。社会保障には、年金を始めとしてインフレスライドが制度的に組み込まれている。公務員の給与も増加する。

ま たインフレによって債務の実質残高を減少させるというが、日本の場合には、政府債務はGDPの2倍にもなる巨額なものなので、2%程度の物価上昇では、あ まり効果はない。 年率2%のインフレを10年間続ければ、物価水準は約2割上昇し、名目GDPも約2割増加する。したがって、国債残高の対GDPは約8 割に割減少するだろう。現在の国債の対GDP比をxとすると0.8xだ。
ところが日本の場合、xは200%程度だ。したがって、これが160%程度に低下するだけで、あまり大きな改善とは言えない。
有意義な額だけ減少させるために、数十年の期間かかってしまう。それだけの期間にわたって、インフレ率を常にある範囲内におさめるという微妙な難しい政策を続けるのは、きわめて難しい。制御できないインフレになる危険がきわめて強い。
以上のような問題にどのように答えるかを明確にしなければ、事態をコントロールできなくなる危険がある。

仮にこうした問題をすべてコントロールできたとしても、インフレ税による実質債務減額は、公平の点から許容できない。日本の財政法第5条の根底には、そうした思想がある。

 

2月3日の日銀介入は円安政策        2017年 2月 4日
2月3日の金融市場で長期金利が急上昇し、日銀の介入によって再び大きく低下した。
日銀はなぜ加入したのか?もちろん、「長期金利を0%程度に維持する」という目標があるからだが、その目標は何のために必要なのか?
日銀は、金融政策の目標は、物価上昇率2%の達成だとする。では、長期金利を抑えれば、なぜ物価目標が達成されるのか?
最も自然な解釈は、金利を抑えれば円安になり、輸入物価が上がって、消費者物価も上がる。そうしたプロセスを期待しているということだ。
そうだとすれば、まさにトランプ米大統領が指摘する通り、日本は為替レートを円安にするために金融政策を行なっていることになる。
日本政府は、「ここ数年間は為替市場への介入を行なっていないから、円安政策をとっていない」という。しかし、円安政策とは、直接的な介入だけではない。最も重要なのは金融政策である。

2月3日の閣議後の記者会見で、麻生太郎財務大臣は、「円高により状況を是正するために金融政策を緩和した」と述べたと報道された。会見後財務省が「デフレ状況を是正するため」と訂正したが、「うっかり本当のことを言ってしまった」ということだろう。

たま、2月3日の為替レートは、日銀の介入に応じて変動した。長期金利の急上昇に反応して1ドル=112円台になり、日銀の介入で長期金利が下がると、円安になった。

 

アメリカの雇用を日本が増やす?  2017年 2月 3日
日米首脳会談に臨むにあたり、日本はアメリカでの雇用を創出する政策を提案すると報道された(朝日新聞2月3日朝刊)。
アメリカでのインフラ投資に対して資金協力するのだという。
こんな奇妙な政策はない。

相手が理不尽なことを言ってきたから、お金で解決しようというのと同じだ。これは、示談金と同じ発想である。
では、メキシコが、「工場ができずに雇用が減った。困った」言ってきたら、どうするのか?
あるいは、中国が「経済成長率が落ち込んできたので、雇用を増やしてほしい」と言ってきたら?

1980年代の「プラザ合意」も、ドル高によってアメリカの自動車産業が危機的状況に陥ったのに対応するために行われた。
しかし、この場合には行われたのは、国際協調である。為替レートをドル安に導くために協調介入し、そして日独が財政支出を増加させるというものであった。アメリカ国内の雇用を増やすプログラムを作ったわけではない。
そうしたことを調整するために、為替レートがあり、マーケットがあるのだ。

それに、アメリカのインフラ投資に協力したところで、アメリカの自動車産業の雇用が増えるわけではない。

今 回の提案は、日本がこれまで何度もやってきた総合経済対策と同じだ。いろいろな事業(その中には既に決定されているものも多い)をかき集めて、事業規模を 大きく見せる。これで日本国民をだますことはできるかもしれないが、同じことをアメリカにしたところで、「新幹線事業の売り込み」と見なされてしまう危険 のほうが強い。
円安批判は抑えられないだろう。

円安政策の停止は、アメリカのためにではなく、日本の消費者のために必要なことだ。
いま金融緩和をやめれば、円高になり、日本の輸入物価は下落し、外国のもの安く買えるようになる。そして消費が増えて、日本経済が活性化する。

日本政府は、金融緩和が円安をもたらしていないと強弁しているが、こんな説明をしてアメリカが「はい、そうですか」と引きさがるはずがない。
「金融緩和は日本国内の政策であり、物価上昇率を引き上げるために行っているので、為替レートとは関係がない」というような説明が通用するはずがない。

 

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