経済最前線 2017年4月1日~4月30日


経済最前線

2017年4月1日~4月30日

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MUFGコイン成功のカギを握るのは、他行預金への出金手数料  2017年4月30日

 三菱東京UFJ銀行が、5月1日から独自の仮想通貨「MUFGコイン」の実証実験を始めると、4月30日付の朝日新聞が伝えた。
 年内に国内の全行員が使えるようにし、2018年春には一般向けに発行する計画だという。

 これが成功するかどうかについて、ポイントは2つある。

 第1は、どれだけ多くの店舗がこれを受け入れるかだ。保有者の間だけで割り勘の清算のようなことをしているだけでは意味がない。多くの店舗が支払い手段として受け入れて初めて、利用価値が高まる。
  例えば、タクシーの料金を支払うのに使えるようなことになれば、利用者としても便利だし、タクシー会社にとっても都合がよいだろう。

 第2はコストだ。これには、いくつかの側面がある。
 第1は、現実通貨からの入金コストである。現在でも、取引所と関係がある銀行からの入金であれば、ビットコインを購入する手数料はゼロである。MUFGコインの場合も、三菱東京UFJ銀行の預金を用いて購入するのであれば、多分手数料はゼロに設定されるだろう。

 第2は、仮想通貨の送金コストだ。現在でも、同一取引所の異なるアカウント間の送金であれば、手数料ゼロのサービスが提供されている。MUFGコインの場合も、MUFGコインのウオレット間の送金であれば、手数料はゼロに設定されるだろう。
 ただし、大量の送金要求による攻撃からシステムを防御するために、ごくわずかの手数料を課す可能性もある。

 ビットコインの場合には価格変動が激しいので、ビットコインで受け取った場合、直ちに現実通貨に転換することが要請される場合がある。しかし、MUFGコインの場合は、価格変動がないので、コインのまま保有していても損失を被る危険はない。

 ところで、当然のことながら、三菱東京UFJ銀行の預金口座保有者間の送金だけでは、利用価値は大きく限定されたものとなる。したがって、他行口座保有者への送金も可能とされなければならない(他行も同様の仮想通貨を発行する場合には、それらとの交換)。この場合のコストはどうなるだろうか?これが、コストの第3の側面である。

 この場合の対処の仕組みとしては、まず、MUFGコインを円に転換して三菱東京UFJ銀行の口座に出金し、それを他行に口座振替で送ることが考えられる。しかし、これでは、現在のシステムとほとんど変わらないものになってしまう。
 他行がMUFGコインを受け入れ、それを円に転換して、その銀行の口座に出金できるようにする必要があるだろう。そうすれば、コストは現在のシステムより引き下げられるだろう(また、利用時間等の面でも現在より使いやすくなるだろう)。
 しかし、他行が直ちにそうしたサービスを導入してくれるかどうか分からない。また、その場合の手数料がどうなるか、分からない。

 この問題は、異なる銀行間の決済がどのような仕組みで行なわれるかによる。現在考えられているのは、現行の日銀ネットを用いて現在の銀行間決済と同じ仕組みで行なうということだ。もしそうだとすれば、手数料の引き下げには限界があるかもしれない。

 この手数料がどの程度になるかによって、導入店舗の数も影響されるだろう。
 もしこの手数料が1%を切れば、クレジットカードの場合より安くなる。またビットコインよりも有利になる可能性もある。そうなれば、多くの店舗が銀行の仮想通貨を導入し、利用が拡がるだろう。しかし、そうしたことになるのかどうか、現在のところ、判断ができない。
 銀行が発行する仮想通貨が成功するかどうかは、この点にかかっている。

 

トランプ政権によるH-1Bビザ発行規則の見直しは、アメリカ人の職を増やすか?
2017年4月24日
ドナルド・トランプ米大統領は、4月18日、H-1Bビザ(外国人の特殊技能者向けに発行される短期就労ビザ)発給の規則を変更する大統領令に署名した。
    この制度は、本来の趣旨と離れて、タタなどインドのアウトソーシング会社が大量の労働者を呼ぶために利用され、他の利用者が押しのけられていると批判されてきた。
 アメリカ企業からの業務委託契約を獲得するため、インドから大量の労働者を呼び寄せ、アメリカ企業の技術部門で訓練し、その後、インドに戻すのだ。

 検討されている一つの方法は、対象労働者の給与の引き上げだ。
 これが実施されれば、インドのアウトソーシング企業には打撃だろう。そして、外国人労働者は、GoogleやFacebookなどの有力ハイテク企業に向かうこととなる。そうなれば、ハイテク企業の立場からも歓迎されるだろうと言われている。

 ただし、それによって、インドへのアウトソーシングが減る訳ではないだろう。むしろ、アメリカ国内での技術者不足が深刻化し、アウトソーシングが増える可能性が高い。だから、トランプ大統領が望むように、アメリカ人労働者の職が増えたり、給与が上がったりすることはないだろう。

 「H-1Bビザは、南アジアと東アジアからの学生がアメリカの大学で学位を取得し、アメリカで職を得ることを容易にしており、それが問題だ」という考えは、トランプ政権内で依然として根強い。
 トランプ政策が移民阻止の方向に傾いているため、海外の学生は、アメリカに留学することを躊躇するようになっている。こうした傾向が続けば、アメリカの最大の強さである先端技術の開発に本質的な悪影響が及ぶだろう。


「自由貿易が必要」と主張するなら、農産物の自由化を進める必要がある

2017年4月17日
 日米経済対話で、農業分野の輸入自由化が論点になることは避けられないだろう。
 USTRの代表に指名されたロバート・ライトハイザーは、「アメリカが多くの農産物の貿易障壁を我慢しなければならないのは理解しがたい」とし、「農業の市場開放で第一の標的は日本だ」と述べている。
 まず問題となるのは、肉などの畜産物だ。そして、日本にとっての聖域である米についても、自由化の圧力がかかる可能性がある。

 「トランプ大統領の貿易政策が、アメリカにとっても望ましくない」と言う意見は全く正しい。そして、その論理は、日本の農産物貿易についても、等しく当てはまる。日本が農産物について輸入を制限するのは、日本の国民にとって明らかに望ましくないことだ。

一方において自動車を輸出するために「自由貿易が必要」と言い、他方において国内農業を保護するために農産物に高率の関税を課すのでは、まったく矛盾したメッセージを世界に向かって発することになる。そこにあるのは、国内の生産者を保護するという視点だけだ。

 日本が「自由な貿易こそ重要」と主張するのなら、真っ先に手を付けるべきは、農業である。

 

未来への可能性を独占しているアメリカのハイテク企業
2017年4月9日
 4月7日のフィナンシャルタイムズが伝えたところによると、Googleは、自動運転車を開発している1人のエンジニアに対して、1億2,000万ドル(133億円)のボーナスを与えた。日本の企業でいかに企業に貢献しても、100億円を超えるボーナスを得られることはないだろう。グーグルは、全く異質の企業であることが分かる。

 この記事によると、アマゾン、アルファベット、インテル、マイクロソフト、アップルは、年間650億ドル(約7兆2000億円)の研究開発費を支出している。
 一方、「科学技術研究調査報告」(総務省統計局)によると、日本の企業、非営利団体・公的機関及び大学等の2015年度の科学技術研究費の総額は、18兆9391億円だ。上記5社の数字は、この4割近くになる。

 これらの企業は、財務的に余裕があるというだけではない。人工知能の開発に不可欠なビックデータという重要な資源をほぼ独占している。未来を切り開く可能性は、これらの5社に独占されていると考えざるをえない。こうした条件下で、日本は、将来の産業についていかなるビジョンを描くことができるだろうか?

 

仮想通貨による情報の有料発信は、Googleにとって本質的な逆風になる
2017年4月3日
 Googleの時価総額は、巨額だ(現在2つに分かれているので小さく見えるが、合計すれば、マイクロソフトを抜いて、アップルに次ぐ世界第2位だ)。
 ところで、同社の収入の9割以上は広告料収入である。
 Googleの検索エンジンは極めて優れたものである。そして、Googleの広告の効率が良いのは、それが検索連動広告になっているからだ。だから、Googleの収入の背後に検索エンジンがあることは間違いない。ただし、検索エンジンそれ自体が直接に収益を生んでいるわけではないことに注意が必要だ。

 ところで、Googleによる検索連動広告は、ウェブにおける情報発信のビジネスモデルにも大きな影響を与えた。ウェブにおける情報提供が、課金型ビジネスモデルではなく、広告収入ビジネスモデルになったことだ。
 こうなったのは、これまで少額課金が難しかったからでもある。

 ところが、仮想通貨によって、この状況が変わる可能性がある。仮想通貨による送金コストは、(ゼロではないとは言え)これまでの方法に比べれば著しく低い。そして、今後さらに引き下げることが可能だろう。
 これによって、ウェブにおける有料の情報提供が広まる可能性がある。そうなれば、広告に依存しない情報提供ビジネスモデルが可能になる。

 これは、Googleの広告料収入には、逆風になる。広告料収入がゼロになることはないだろうが、現状より大きく減少する可能性は十分ある。
 仮想通貨の普及は、Googleにとって本質的な問題を提供するのである。

 

広告モデルからの脱却が可能になりつつある
2017年4月2日
   ウェブにおける情報や知識は、無料で配信し、別の方法で収益を得るという方法が中心になっている。中でも広告モデルが中心だ。
 この場合、記事が閲覧されることが重要で、そのために検索エンジンで上位に表示されるよう、様々な手法が用いられる。
 こうして、記事の内容を充実させることよりは、記事の大量生産が優先化される結果になる。これが嵩じて、日本ではキュレイションメディアの閉鎖と言う問題も生じた。

 ところで、ラジオやテレビなどの無線放送では、課金すること自体が技術的に難しい。しかし、インターネットの場合には、料金を払わなければ記事を見られないようにすることが、比較的簡単にできる
 実際、「ウエブ情報は無料」という状況は、最近に至って変わり始めている。まず大手の新聞社が、ウエブの記事を有料化することを始めた。日本でも、朝日新聞や日本経済新聞が記事の有料配信を行なっている。
 有料化によって、情報の質が向上することが期待される。

 ところが、有料情報提供ができるのは、これまでのところ、有力新聞社にほぼ限られている。そして、個人が課金をすることは、依然としてほとんど不可能だ。その理由は、簡単な少額送金手段がないことだ。
(もう1つの理由は、情報の存在を広く知らせることが難しいことだ。ただし、これはSNSの利用で克服しうる)。

 しかし仮想通貨の利用が広がれば、マイクロペイメントが可能になり、個人による有料情報提供は、現実的なものになる。日本の場合、メガバンクが仮想通貨を発行することになれば、事情は大きく変わるだろう。

 

失業率低下は、 低生産性部門での人手不足の現れ
2017年4月1日

 2月の完全失業率は、2.8%になった。これは1994年6月以来の低い水準だ。
 これは雇用状況の改善と評価されている。しかしその実態を詳しく見ると、必ずしも望ましいこととは言えない。

 以下では、2013年と17年2月を比較することにしよう。まず、完全失業率は、4.0%から2.8%へとかなりの改善だ。
 この間に、就業者数は6326万人から6427万人に約100万万人増えた。他方で労働力人口が6593万人から6615万人へとほとんど変化しなかったので、失業率が低下したのだ。
 しかし、就業者増のほとんどは、女性の就業者が2707万人から2793万人に増えたことによる。これは、女性パートが増加したことによるものだ。実際、女性非正規が1299万人から1376万人に増加している。

 産業別に見ると、非農林業就業者は6109万人から6260万人に増加しているが、建設業は減少、製造業は微増なので、増えているのはサービス産業である。とくに、医療・福祉が顕著だ(738万人から776万人へ)
 以上を要するに、現在生じているのは、生産性部門での人手不足の深刻化なのだ。雇用条件の改善とは言い難い。

 このように、日本の雇用状況は、高度成長期の頃のそれとは著しく異なるものになっている。繰り返せば、製造業などで終身雇用が保証されていた時代は終わり、生産性の低い分野における、低賃金で、将来の保証がない就業が増加している。
 政府が先般発表した「働き方改革」には、このような変化に対する認識が十分でない。現在の状況を高度成長期型の姿に戻したいだけのように見える。
 フリーランシングに対する欲求が強いのも、このような背景のもとで理解する必要がある。

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