『世界史を創ったビジネスモデル』(概要)


『世界史を創ったビジネスモデル』(概要)

 

本書は、世界史における3つの物語を取り上げている。
第1は、古代ローマ帝国の建設と衰退、第2は、海洋国家の勃興。そして第3は、現代における情報革命である。
一見すると、脈絡のない出来事を並べたように思われるかもしれない。しかしこれらは共通するものを持っている。それは、胸をワクワクさせる高揚感を与えてくれることだ。
どんな冒険小説よりも面白いことが、現実の世界で展開されたのである。人間は(あるいは人間のチームは)、これほどの壮大な企てを遂行できる存在なのだ。
本書は、これらの物語の中から、ビジネスモデルを考える際の参考事例を引き出そうとする。ビジネスモデルを論じるのにこのような方法をとることの意味は、序章で述べる。そこで、こ
こでは、歴史をある特定の観点から眺めるのがいかに楽しい作業であるかを述べよう。
歴史とは、緑の沃野のようなものであって、そこから、ある目的に合うものを自由に摘んでく
ることができる。それらを材料として並べ変えてみれば、実に面白い創作物ができあがる。
しかし、こうしたことは、通常の歴史学ではなされない。なぜなら、歴史学者は、専門家の常として、一定の作法に従わなければならないからだ。
ゲーテの『ファウスト』の中で、メフィストーフェレスは、「思索などする奴は、緑の沃野にあって、悪霊に枯野原を引き回される動物の如し」(EinKerl,derspekuliert,istwieeinTier,auf
dürrerHeidevoneinembösenGeistim Kreisherumgeführt,undringsumherliegtschöne,grüne
Weide:FaustI,Studierzimmer)と言っている。
私は、思索が無益なこととは思わないのだが、歴史学者が枯野原を引き回されているのは事実
だと思う。つまり、禁欲を強いられている。
歴史上の様々な事件という緑の沃野があるのに、そして、そこから好き勝手に摘んできて並べれば新しいものが見えてくるのに、そうしたことは許されない。
歴史学者の役割は、資料の原典にあたり、歴史的な事実を探ることだ。それに勝手な解釈を加えることではない。資料は、2次資料(誰かの著作や論文)ではなく、1次資料(これまで知られていなかったその時代の原資料)でなければならない。こうした作業をやっていれば、幅広く自由な見方を述べる暇などなくなる。
逆にいえば、歴史の非専門家は、歴史家が集めてくれた資料を材料として、自分の自由な考えを展開することができる。歴史をこのように利用できるのは、歴史学を専門としない者の特権である。
学問の世界は細分化され専門化されており、そこからはみ出した発言をすることは、学界のルールになじまない。歴史学もまた専門が細かく分かれている。アカデミックな地位を維持するためには、専門分野に凝り固まる必
要がある。古代ローマが専門の歴史学者は、大航海時代について言及することをためらうだろう。ましてや、現代の情報革命について論評することなどありえない。
しかし、広いパースペクティブを持ち、しかも歴史学とは異なる観点から眺めて、はじめて明
らかにされることもある。そうした例として、グレン・ハバードとティム・ケインの『なぜ大国は衰退するのか 古代ローマから現代まで』(日本経済新聞出版社)を挙げることができる。
ハバードはマクロ経済学の第一人者だ。そうした人が歴史を取り上げ、大国がなぜ衰退するかを経済的な観点から分析した。しかも、対象とする範囲も、古代ローマ帝国から現代までと、きわめて幅広い。
この著書で彼らは、通常のローマ史では賢帝とされている皇帝たちが、実はローマ衰退の原因を作ったと論じている。そして、経済学を知らなかった当時の人々がそうした行動を取ったのはやむを得ないことであったと述べている。つまり、経済学のプリンシプルを用いて、歴史上の事実に新しい解釈を与えているのだ。
この事例は、それまでよく知られている歴史上の事実であっても、別の分野の専門家がその分野の観点で見ると、新しい歴史像が浮かび上がってくることを示している。私が本書で試みようとするのも、同じことである。
人間は誰でもある時期になれば、過去を振り返ってみたくなる。それは、自分自身もその一員である人類という種族が、これまで辿ってきた道がどんなものであったかを知りたいという欲求だ。その場合、日本とヨーロッパの違いなど関係ない。
歴史の知識を蓄積すれば、これまで知っていた事柄が、新しい光の中で照らし出される。それまでバラバラに把握していたことがつながる。関連性が分かり、一つの大きな構造の中に位置づけられる。
それはあたかも、ジグソーパズルで絵が浮かび上がるようなものだ。あるいは、クロスワードパズルで文字がつながるようなものだ。ある時、一気に理解が広まる。これは、大変楽しい。
知るべきことは、山のようにある。そして知れば知るほど、知るべきことは増えるだろう。

 


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