「超」情報革命が日本経済再生の切り札になる

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「超」情報革命が日本経済再生の切り札になる

(ダイヤモンド社、2015年11月19日) 概要紹介

新しい技術が登場して経済社会を大きく変えようとしている。
本書においては、そのような技術の動向を紹介するとともに、日本が新しい技術体系を導入するためになされなければならない施策について述べた。

人工知能がレコメンデーションを行なう
新しい技術の第1群は、人工知能やビッグデータに代表されるものだ。これらは、日常生活にも大きな影響を与える。
例えば、「レコメンデーション」と呼ばれるサービスがある。コンテンツの電子化に伴って、極めて多数のコンテンツが現れてくる。個人個人の好みに合ったものを供給することが可能になる。
しかし、個人の側からすると、選択対象が多すぎて、どれを選んだら良いか分からないという問題が発生する。
そこで、レコメンデーションという機能が登場する。コンテンツに関する様々なデータと個人データを突き合わせることによって、その人が望んでいるコンテンツを紹介するサービスである。
すでに動画コンテンツに関して、アメリカのオンデマンド・ビデオ会社ネットフリックスが、このような技術を開発している。
また、映画について、シナリオから興行成績を予測することも可能になってきている。さらに進んで、「どんなシナリオにすればヒットするか」というアドバイスも行うようになっている。
こうなってくると、反発が生ずるかもしれない。コンピューターの言うままに選んでいるだけということになりかねないからだ。またコンピューターに作り直しを指示された作成者は、愉快な気持ちにはなれないだろう。ところが、コンピュータはすでに、文章や音楽を自ら作り出す段階にまで来ているのである。
人工知能+ビックデータの利用は、コンビニエンスストアでもすでに用いられている。顧客の動向を個人ベースで把握し、それに応じた品揃えや展示の方法を考えるのだ。

スマートフォン上の新しいサービス
新しい技術の第2群は、スマートフォン上の新しいサービスだ。例えばタクシー配送のUberというアプリがある。あるいは、空室を旅行者などに貸すAirbnbと言うサービスも始まっている。これらのサービスは急成長している
大きな変化が起こるのは、単にそれらのサービスが便利であるというだけではない。社会構造を大きく変えつつあるのだ。例えばUberは、タクシーの配車だけではなく、個人の車をタクシー用に供することも行なっている。
もちろんこれは、タクシーの事業が免許制である以上、違法だ。しかし、その規制の必要性自体が問われているのである。アメリカの多くの州で、タクシーの規制が撤廃され、自由化が進んでいる。
これまでの規制の基礎にあったのは、「消費者保護」という概念であった。消費者はサービス内容について十分な情報を持たないから、一定の資格を持つ者だけをサービスの提供者として営業を認めようというわけである。しかし、それによって本当にサービスの質が確保されていたかといえば、疑問がある。実際には、免許を得た人たちの既得権益を守る手段になってしまっている面が強いのだ。
ところが、スマートフォン上のサービスでは、利用者が直ちにサービスを評価し、それを供給者にフィードバックすることができる。そうした情報はスマートフォン上に示されるので、次の利用者はそれを参照しながら選ぶことになる。このようにして市場情報の不完全性が克服されていく
これからのサービスは、「シェアリング」と呼ばれている。ただし、シェアリング自体は昔からあった。いま生じている大きな変化は、以上のように、規制が緩和され、供給者の範囲が広がるということだ。
これまでは、事業者だけが供給者であった。ところが、個人が空いた時間や自動車、部屋などを活用することが可能になり、新しい所得獲得の機会を得たのである。変化の本質は、フリーランスと呼ばれる新しいタイプの就業形態の広がりだ。

ビットコイン技術の新たな展開
本章では、ビットコイン技術の新しい展開についても紹介している。アメリカの金融機関が独自の仮想通貨を開発している。また、アメリカの証券取引所ナスダックは、ビットコインの基礎技術を応用する新しい証券取引を始めようとしている。
ビットコインは日本では否定的に評価されることが多い。しかし、これは、金融における大変革なのだ。
しかも、その応用範囲は金融に留まらない。例えば、IoTに応用することも考えられている。これまでのような集中管理方式でIoTを行なうと、コストが高くなる。したがって、ホームオートメーションのような分野には導入しにくい。そこで、スマートコントラクトとして定式化した契約を、自動的に実行しようとする試みが行われている。

<新しい技術を日本が導入するには?>
さて、以上のような新しい技術を日本で導入できるだろうか?いくつもの問題がある。
第1は、社会構造の変革だ。
先に述べたように新しい技術は、従来の規制体系と衝突する。したがって規制を変えていかなければ、新しい技術を利用することができない。
規制改革が必要であると言われる。しかしこれらの政策は、いわゆる岩盤規制に相当する。これを突破できるかどうかが重要な課題である。
ところが、安倍政権の基本的な方向は、経済活動に対する国家の介入を強めようというものだ。このような方向とは逆の方向の経済政策が求められているのである。
第2の課題は、サイバーセキュリティーである。例えばIoTによって様々な機械がインターネットに接続されるようになれば、サイバーテロの危険は大きくなる。実際、そのような攻撃はすでに数多く報告されている。原子力施設がサイバー攻撃されたという報道もある。これらの背後には、国家的な規模でのサイバー戦争があると考えてもよい。
しかし、この分野で日本は著しく立ち遅れている。日本年金機構での情報漏洩問題も、中間報告が出されているが、犯人は誰だったのか、どれほどの情報が露出したのか、というようなことについて、はっきりしたことがわからない
現政権は安全保障問題に関しては極めて熱心だ。しかし、その背後にある認識は、従来型の軍事力に関するものだ。すでに戦争は、物理的な実力行使から情報戦に変わりつつある。
第3の問題として、「スタートアップ企業が誕生し、成長できるための社会経済的な条件が満たされているか?」という問題がある。まず第一に、資金面での支援体制が必要だ。株式会社制度は、もともとはリスクマネーの供給を目的に作られた制度であるが、大規模化するに従い、リスク挑戦には必ずしも適当なものではなくなってきている。
シリコンバレーにおけるスタートアップ企業に対する金融支援は、ベンチャーキャピタルという仕組みによって行われた。これらの仕組みは日本では立ち遅れている。
日本の成長戦略は、ベンチャーを政府が育成し支援することだ。しかし、これは形容矛盾としか言いようがない。政府の介入がこうした分野に及べば、新しい可能性の追求は行われなくなり、状況は硬直化するだろう。

放置すれば日本は中国化する
アメリカでは、新しい産業が経済発展をリードしている。しかし日本の産業は変わらない。このため日本とアメリカのGDPの格差が広がりつつある。
半面で、日本と中国の一人当たりGDPが接近しはじめている。これは要素価格均等化定理から当然予想されることであり、それが現実化しているのだ。この状態を変えるためには、日本の新しい技術を採用し、産業構造を変えていかなければならない。
なお本書では、最近の経済情勢に関する分析も行っている。アベノミクスは為替レートや株価を変化させただけで、実体経済には影響与えていないことを指摘する。また、アメリカが金融正常化の過程に入り、世界経済が新しい均衡を模索していることについても述べる。

 

目次

はじめに

第1章 人工知能とビッグデータが広げる可能性
1.人工知能が選んで勧めてくれる
2.ビッグデータがビジネスモデルを変える
3.ディープラーニングでコンピュータが進化
4.人工知能時代の文章の書き方
5.人工知能で検索が変わる
6.人工知能とビッグデータはいかなる世界を作るか?

第2章 新しいITサービスが変える市場経済の姿
1.UberやAirbnbなどの新サービスが登場
2.参入規制が突然時代遅れになった
3.インターネットが生む「フリーの専門家」
4.「シェアリング」というより「フリーランス世界」の到来

第3章 本格的利用が始まったビットコイン技術
1.ビットコインに対する理解が広がった
2.欧米金融機関の具体的取組み
3.ナスダックによるビットコイン技術利用の株取引
4.新興国で急拡大するビットコイン送金
5.IoTにビットコインの基礎技術を使う

第4章 成長するアメリカと停滞する日本
1.高度サービス産業で成長するアメリカ経済
2.企業ランキングで見る日米成長力の大きな差
3.日本経済は急速に「中国化」しつつある
4.新産業創出に必要な経済制度は何か?
5.なぜ日本の起業率は低いのか?

第5章 日本が新技術を取り入れるためになすべきこと
1.日本を「ソ連化」する安倍内閣の成長戦略
2.安倍政権に欠けているサイバー安全保障
3.年金機構の情報漏えい事件の全貌はまだ分からない

第6章 アベノミクスでは日本は復活しない
1.マイナス成長が明確に示す経済政策の根本的誤り
2.マイナス成長は構造的
3.インフレ目標を取り下げるべきだ
4.「新しい3本の矢」という奇妙な経済政策
5.TPPは成長戦略になりえない

第7章 投機の時代の終了
1.アメリカ金融正常化
2.世界経済動揺の震源地は新興国

 

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