静かなる男

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静かなる男
映画「静かなる男」(1952年)は、アイリッシュアメリカンの祖国帰還物語。ジョン・ウェイン、モリーン・オハラ、バリー・フィッツジェラルドなど、「ジョン・フォード監督のアイルランド一座」のメンバーが総出演している。

主人公ショーン・ソートンは、アメリカに渡ったアイルランド移民の子のボクサー。アイルランドからの移民は、移民先でも歓迎されなかった。アメリカでは、警官や消防士になった人が多い。芸能界には多い。とくに映画界にはアイリッシュアメリカンが沢山いる。

アイルランド移民が多いもう一つの業界は、ボクサーだ。映画「ミリオンダラーベイビー」も、そうした背景をしらないと理解できない。
アイルランドの歴史もアイルランド移民の歴史も、後進性と貧しさと苦難の歴史なのである。

「静かなる男」の主人公は、試合中に誤って相手を殺してしまったことからボクサーをやめ、故国に戻ってくる。つまり、これは、故郷に錦を飾る物語ではなく、夢破れたアイリッシュアメリカンの傷心の原点探しなのだ。
故郷の村で彼が見出したのは、現代の産業社会ではおよそ使い物にならないような人びとだ。映画の冒頭、「列車はいつものように、3時間遅れで到着しました」という説明で、それが予告される。
古い因習にとらわれ、頑固で融通がきかず、金銭に執着し、他人の私事にやたらと首を突っ込みたがる人びと。しかし、彼らはなんと豊かな情感に溢れているのだろう。
女主人公メアリ・ケイト・ダナハが歌う「イニシュフリーの島」は、われわれの心をとらえて離さない(歌っているのがモリーン・オハラではなく、吹き替えなのが残念だ)。

 

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